平成16年度には、以下の4項目の調査研究を行った。(1)わが国の廃棄物処理行政のしくみと現状、(2)家電リサイクル法の施行状況と廃家電製品の不法投棄の現状、(3)廃棄物処理規制における罰則規程の変遷、(4)関連する学術論文の探索と内容の精査。これらの成果の一部が、下記の3つの論文に反映されている。 〔論文(1):Double Waste Reduction under Standards〕以前口頭発表した論文に、最近の廃棄物処理行政のしくみや関連論文との比較を書き加えて脱稿したものである。家計と企業が独立に廃棄物の排出抑制を行う場合、それぞれに排出規制を設けるだけで十分なのかどうか、一般均衡モデルを用いて検討している。企業が排出抑制をした後に残る最終的な廃棄物の限界不効用と潜在価格の大小関係に応じて、補完的な課税か補助が必要であることを示している。 〔論文(2):使用済み製品の引取と不法投棄の内部化政策:基本モデル〕消費者と生産者がそれぞれ廃棄物の不法投棄を行い、かつそれが確実に発覚するという、最も単純な状況を一般均衡モデルで表現している。生産者の不法投棄にはピグー的な課税(罰金)が必要である一方、消費者の不法投棄には製品への課税と投棄への課税を組み合わせ、状況に応じてそのバランスを変えることができると結論している。また、物質収支に関する情報が不十分な場合についても議論している。 〔論文(3):環境規制の遵守と罰金の基礎理論:廃棄物処理法の場合〕廃棄物処理の犯罪の現状と罰則のしくみ、公表データの性質について論じた後、部分均衡モデルを使って、廃棄物処理業者に適正処理義務を遵守させるような方策の効果を検討している。処理業者が不適正処理を隠蔽する場合、罰金の強化によって適正処理が促進されるとは限らない。その結果は、不遵守が発覚する確率の大小に依存する。また、適正処理義務の強化により、適正処理はむしろ抑制される。
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