平成17年度には、当初研究目的として掲げた、(1)日本国内の廃棄物の不法投棄に関する現地調査・統計調査、および(2)数理経済モデルの構築、の2項目に関する調査研究を行った。いずれも、年度内に完結できなかった諸作業が残ってはいるものの、おおむね予定通りの成果が得られた。 (1)の現地調査等については、2005年9月に、青森県三戸郡田子町と岩手県二戸市にまたがる、発覚当時はわが国で最大規模だった産業廃棄物の不法投棄現場を訪れ、現在進行中の原状回復作業を視察した。その後、本補助金による出張ではないが、大分県内での元最終処分場の適正閉鎖作業、および韓国南部の中間処理施設、最終処分場、不法投棄の原状回復現場を視察する機会を得た。 現在、青森・岩手両県の行政担当者の協力を仰ぎつつ、同県境での不法投棄問題に関する経緯とデータの整理を行っているところである。予想以上に時間がかかっているが、完成し次第、本学の専門論文集にその成果を投稿する予定である(仮題は「青森・岩手県境不法投棄問題の経過と視察レポート:研究資料として」)。 (2)の経済モデルの構築に関する論文としての成果は、前年度発表の「使用済み製品の引取と不法投棄の内部化政策:基本モデル」で提示した基本的な枠組みを展開させたもの(=(A)「不法投棄の隠蔽が行われるときの最適な政策の組み合わせ(前・後編)」)と、前年度末に脱稿し今年度の秋に発行された(B)「環境規制の遵守と罰金の基礎理論」である。 それ以外にも、(B)を展開したモデル分析である「廃棄物の不法投棄と罰金の抑制効果」を、日本経済学会秋季大会で口頭発表した。また、(A)の分析を集約した"Optimal Waste Policies When Illegal Disposal can be Concealed"は、2006年7月に京都で開催される環境経済学の世界大会で報告することが許可されている。
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