研究課題
本年度は、詳細な産業別・企業別データを整理と、そのデータを利用して、下記の研究実績を行った。(1)日本の貿易統計を整理・加工することにより作成した1980年〜2003年までの産業別・貿易相手国別に輸出入データを利用し、産業内貿易の指標や輸出入結合度等の貿易指標を整理し、特に90年代以降、アジア諸国との間で垂直的な産業内貿易(品質の異なる同種の財の相互貿易)が増加していることを示した。さらに、このような貿易パターンの変化が、国内の資本労働比率や労働需要にどのような影響を与えたかを、産業別データを利用して計量的に分析した。日本の貿易に体化された生産要素量の変化を見たところ、日本は物的資本や熟練労働集約的な財をより多く輸出する方向に特化パターンが変化した。また、マクロ経済全体の資本労働比率と熟練労働比率の上昇過程において、そのほとんどが産業間効果(要素集約度が高い産業の拡大)よりも産業内効果(各産業内の要素集約度の上昇)に帰せられることが分かった。これは、産業間貿易よりもむしろ産業内貿易を通じて国際分業が進んだ可能性があることを示唆している。さらに、回帰分析の結果、国内の熟練労働シフトに対して特にアジアとの垂直的産業内貿易の進展が大きな正の影響を与えていることが示された。(2)経済産業省の『企業活動基本調査』の企業別データを利用し、目本国内における外資系企業の活動規模の把握と外資系の参入が企業の生産性に与える影響等について分析した。製造業について、日本企業と外資系企業のパフォーマンスを比較したところ、外資系企業の方が全要素生産性が高い上、収益性も高く、総じてパフォーマンスが良かった。そして、外資系企業の方が資本労働比率や研究開発集約度も高く、その結果を反映してか、労働生産性や賃金率も高かった。さらに、外国企業は日本企業を買収する際に、生産性や収益性が比較的高い企業を買収先として選択する傾向も見られた。
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フィナンシャル・レビュー(財務省財務総合政策研究所) 第80号(未定)
経済研究 56巻・4号
ページ: 331-347
Journal of the Japanese and International Economies Vol.19,Issue 2
ページ: 272-301