本研究課題は、エネルギー分野における規制改革にもとづく地域独占市場に対する新規参入や相互参入が、当該地域内での競争を激化させ、経済厚生を改善させるであろうという直接的な効果だけでなく、地域間ネットワークを通じたエネルギーの「輸出入」による間接的な波及効果が日本全国に及ぼす影響、あるいはそういた影響の地域間格差について、主に電力事業とガス事業を中心として定量的に分析することを目的としている。 本年度は、今後の空間均衡モデルの構築、およびシミュレーション分析の結果に対して重大に影響を及ぼす電力需要価格弾力性のパラメータについて、沖縄を除く全国を9地域別けて推定を行なった。なお、推定に際しては1976年から2001年までの26年間の年次データを用い、誤差項の不均一分散や自己相関といった統計的問題も考慮してGMM推定法を用いた。これにより、 1、各地域の電力需要価格弾力性は、推定期間により多少の変動があるものの、おおむね-0.15から-0.45の範囲に収まること、 2、北海道や四国といった自家発電の比率の高い地方の方が、東京や中部、関西といった大都市圏に比べてより弾力的であること、 などの結果が得られた。 また、今後の研究課題は以下のとおりである。 1、地域別ガス市場のモデルの構築、および価格弾力性の推定 2、電力の全国的な連系ネットワークを通じた地域間波及効果を包括的に把握することができる「エネルギー空間均衡モデル」の構築 3、上記モデルを用いた政策シミュレーション分析
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