自動車リサイクル法の施行に伴って、ELV処理・リサイクル関連業界は大きな業界再編の過程にある。特に自動車解体業へ新規参入が激しい。北海道では大手鉄スクラップ業者がこぞって自動車解体業に参入した。ASRリサイクルに参入する業者もおり、鉄スクラップ業は上流、下流双方へ事業の範囲を拡大し、いわゆる垂直的統合の経済的メリットを最大限引き出そうとしている。また、法策定の過程では想定されていなかったと考えられるSS(サービスステーション)運営業者からの進出も見られた。筆者が調査した結果、自動車解体業とは一件無関係なSS運営は、参入に極めて有利に働き、道内の業界再編に大きな影響を与えるものと推察された。 一方、既存の業者も協業化を進めている。少ない経営資源を、ノウハウの蓄積があるため有利とされる中古部品販売に振り向けることによって、生き残りを図ろうとしている動きが見られた。しかし、業者の大幅な淘汰は避けられず今後の社会経済的影響が懸念される。 自動車リサイクル法は、中古車の輸出ドライブをかけるといわれている。中古車の輸出に関わる業界も大きな再編を迎えると考えられる。ただ、中古自動車輸出関連のデータ不足を始め、この業界やデータの全貌を明らかにするのはここまでは困難であった。今後いっそう時間・費用をかけて調査していく必要がある。すくなくとも、現状が続けば、日本から輸出されている中古自動車が、輸出先で深刻な地域環境汚染を引き起こしかねないことを指摘しておく必要がある。今年度調査したロシア・極東地域は、日本からの中古車フローが一貫して増大しており、現状が改善されないようであれば、国際問題に発展する可能性もある。今後、適切な国際リサイクルの構築も視野に入れて、現行制度を改善していくべきである。
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