本年度は、ELVの処理・リサイクルという概念を若干拡張して研究をすすめ、国際化している目動車リサイクルの動向も重点的に調査し、今後の新たな制度構築に向けで、政策的提言を行うことを目的とした。 まずは国内の中古車輸出基地となっている地域を調査し、同時に、貿易統計や輸出抹消の状況などを精査して、数値と実態の両面から、日本からの中古車輸出の現状把握を行った。その結果、リサイクル法施行以降、中古車輸出台数が増加し、中古車オークション市場にも全体的にタマ附則傾向が強くなるなど、国内市場に相当影響を与えていることがわかった。オークションでの取引価格が上がっているため、国内解体業者が直接ティーラー等から廃車を仕入れるのも困難な状況である。この状況を生み出した要因として、自動車リサイクル法施行もあげることができる。 さて、輸出された中古車が、現地で適切に処理・リサイクルされるのか、ということを調査するため、ロシア諸地域で継続して情報収集を行った。廃棄物行政、環境行政当局への聞き取りや現地での資料収集を行った。現地では、自動車処理・リサイクルは市況に任せて処理実態が決まっている状況であることがわかった。深刻な環境汚染が懸念される状況である。自動車リサイクル法は国内で処理・リサイクルされるものを対象にするが、現状を見る限り、自動車リサイクルの何らかの国際的な共通の枠組みが必要である。 ではどのような共通の枠組みを目指すべきか。まずは、車両登録制度に関して、関係各国共通の枠組みを作っていくことが求められる(車台番号の管理など)。日本で自動車リサイクル法がおおむね順調に運用されている背景として、厳格な車両登録制度に基づく廃車フローの管理かあげられる。関係各国を巻き込んだリサイクル政策には、その前提として、車両登録制度の整備が不可欠なのである。さしあたり、これを提案としたい。
|