1978年経済改革後における中国のマクロデータベースを構築し、実証分析を行うことによって、実体経済、貨幣と物価の関係を明らかにすることが、本研究の目的である。 本年度においては、構築されたデータベースを利用し、実証分析を続けた。具体的には、中国のマクロ経済変数の生成過程と構造変化などについて分析を行った。分析の目的は、中国のマクロ経済時系列データについて、単位根検定を通じてDGP及び構造変化を分析し、それにより政策分析の出発点を与えることにある。分析の手順としては、まず、中国の金融変数・実体経済変数の時系列データについて、ADF検定とPP検定により単位根が存在するという帰無仮説を検証した。そして、ADF検定とPP検定により帰無仮説が棄却されない変数について、Perron[1997]等の方法により構造変化の有無を検証した。分析の対象変数は1983年からの月次データである。金融変数としては、貸出金利、預金金利、M1、M2などを使用した。実体経済の変数としては、実質輸出、実質輸入、実質工業総生産、実質固定資産投資、実質社会商品小売総額、小売物価指数、為替レートなどを使用した。 分析の結果、金融政策の変更、金融政策の中間目標の転換などから、金融変数のDGPに構造変化が生じている可能性があることが分かった。一方、実質輪出、実質輸入、実質工業総生産、実質固定資産投資、実質社会商品小売総額などの実体経済変数については、構造変化は特に見られない。
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