本年度は、京都議定書に盛り込まれた温室効果ガス削減に向けての国際的取り組みにおいて、実施手段のひとつである排出権取引の有望なプレイヤーとして期待されているロシアについて、過年度にロシア(モスクワ)で行った企業調査結果と資料・データの分析を続けながら、京都議定書批准(2004年末)後のロシア国内情勢(政府部門、企業、環境NGO)を中心に検討した。それにより、以下の成果と知見を得ることができた。 1.京都議定書の正式発効(2005年初)後に、ロシア連邦政府は同議定書の具体的運用に向けた総合計画を立案することを決定し、省庁間の連絡委員会を設立した。しかし、実務レベルでの作業は当初の予定よりも大幅に遅れており、停滞気味であることが判明した。 2.京都メカニズム(排出権取引)の実施に不可欠なロシア国内の制度整備状況は不十分で、企業レベルでの取り組みは低調なままである。温室効果ガスの大口排出者であるエネルギー関連企業の間には、京都議定書への取り組み姿勢に差がみられ、電力および天然ガス関連企業は積極的に取り組んでいる一方で、石油関連企業は消極的であるとみられる。 3.ロシア国内で活動する環境NGOに登録制が導入され、外国の環境NGOを中心に登録手続きに遅れが生じるなど、ロシアでの活動に支障が出ていることが確認された。 なお、本年度は研究の最終年度であり、これまでの研究成果を英文にまとめ、発表に向けた準備を進めている。
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