研究概要 |
本研究では企業活動における事業選択と資金調達の意思決定を,企業の信用リスク(負債価値)と株主資本価値を統合的なひとつのモデルの中で同時に評価する手法の開発を目標とし,企業規模や成長段階,そして業種による違いなどがどのように企業の信用リスクと株価に反映するのかを検討している。平成16年度は,(1)既存モデルなどこれまでの学術研究の成果の調査,(2)既存モデルを実務に応用可能なように,モデルを展開し,平易なプログラムを開発,(3)企業再生時のリストラクチャリングにおける事業選択と資金調達の意思決定の調査を中心に行った。(1)については,標準的な企業評価手法の整理を,1990年代以降の学術成果を積極的に取り入れながら行った。具体的には,マートン・ブラック・ショールズらによるオプションアプローチによる信用リスク評価と,リアルオプションアプローチによる実物投資の意思決定を統合し,株主資本価値と負債価値(信用リスク)の評価を統一的な視点から行うための理論を調査検討した。(2)については,(1)の研究成果を踏まえて実務上も応用可能な方法論の開発をめざし,開発を行った。その結果,標準的なDCF法の企業評価手法とリアルオプション評価モデルについて,実務上応用可能なプログラムの開発に成功した。これらの結果は,著作「企業価値評価と意思決定」にまとめ,出版することができた。(3)については,企業再生ファンド,バイアウトファンドへの聞き取り調査を行い,その成果を学術的見地からまとめ,バイアウトファンドの活動をコーポレートファイナンスの視点から調査研究した。この結果は,共著作「バイアウトファンド」として刊行することができた。
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