本研究は日本の地方分権の過程で、並行して起きる高齢化について、地方分権後の歳入、歳出、人口移動が、地方分権の結果に、どのような影響を与えるのかについて、シミュレーション分析することを目的としている。そのような目的の下で、本年度は基本モデルの作成に向けた理論的検討とモデル作成作業を行った。概要としては、地方分権の方向性に関する整理と、地方財政、人口移動に関する基本的な検討を通じて、分析に必要となる理論モデルについて吟味した。その結果、地域間の人口移動が自由に行われる場合を前提とした分析と移動コストが発生する場合とで、居住地に関する水平的公平性を考慮する方向で分析を進めることを重要な評価基準としてモデル構築に着手することになった。ただし、垂直的公平性についての検討についても、考慮する方向で分析を進めることになるので、それらについては地域間の財政力を含めた平等化の観点から引き続き検討を進める。その一方で、シミュレーションモデルに必要なプログラミングの基本モデルの作成作業を行った。世代重複型シミュレーションモデルにおいて、あまり行われていない地域間の人口移動の要素を導入したモデルを構築する必要があった。それらについて、今後の詳細な分析を可能にすることが期待される基本モデルの作成を行った。今後の分析に必要な基本モデルを単純な基本モデルの精緻化とその拡張が行われる。その際には現実的なデータを加えた移行過程を考慮する方向で引き続き分析を行うことを予定している。
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