研究概要 |
本研究事業が対象とする移転価格税制には,国ごとの商習慣・課税ルールの違いによる予想外の適用とそれに関する国際的な係争問題など多大な費用をもたらす恐れがあり,国外との取引を行う企業にとって大きなリスク要因の1つなっている.このような問題を抱える移転価格税制について,データ解析の基礎資料の作成を目的として,東京証券取引所第一部上場の全社を対象に,移転価格の算定方法を中心に,納税者である企業サイドから実態と問題点に関するアンケート調査を行った.具体的な質問事項は次の3つに分類できる.第1は資本金,総売上高,正規従業員,事業内容,主力製品分野など調査対象である企業の基礎データに関して,第2は確定申告の添付書類の国外関連者に関する明細書への移転価格の算定方法の記入の影響や企業が税務当局に取引価格の事前了承を受け追徴課税を避けるために設立された事前確認制度の利用状況等に関して,第3は移転価格税制の税務調査に関して質問を行った.なお,最後の設問では,国税庁と主張が相違した場合の対処,利益比準法(みなし課税)についての見解,従来の基本三方法(独立価格比準法,再販売価格基準法,原価基準法)が適用できない場合に適用が望ましいと考える移転価格の算定方法などの質問も行った.企業名や回答内容などプライバシーに関わる情報が公表されることは決してない事を明記したが,質問内容がかなり踏み込んだ内容になっていたこともあり,当初予定していた回収率を得ることができなかった面もあるため,この調査結果は上記の質問事項に関する多国籍企業の移転価格税制に対する税務行動の定性的傾向を示す資料としてまとめて公表する.
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