現在、各地方自治体では、地方財政の効率化を目的として「行政評価」が進められているが、既存の行政評価は個別分野毎における独立した施策評価を実施しているのみで、自らの歳出配分行動が「住民選好」に基づく政策目的に合致し、各行政分野の歳出に適切な強弱が付けられているかが評価されていない。そこで、本研究では、各地域(因子分析、クラスター分析により地域分類実施)における住民効用関数を推定し(SUR推定、GMM推定による)、当該関数を基に各自治体の歳出配分行動の特性ならびに効率性に関する定量的分析を実施した。 まず、全国228都市(人口10万人以上)を対象として、単年度レベルの評価を実施した。全体的傾向として、富裕化都市では福祉、教育分野の、第2次産業化都市ではインフラ整備、環境保健分野の歳出ウェイトが高い、第1次産業化都市ではインフラ整備、福祉分野の歳出ウェイトが低い、などの結果を得た。なお、当該研究の成果は『経済研究(大阪府立大学)』第50巻第2・3・4号(2005)において公表済みである。 続いて、全国47集計都道府県(各都道府県と各都道府県の属する市町村を集計)を対象として、各地域における社会資本ストックの推計を経たうえで、複数年度レベルの評価を実施した。全体的傾向として、第1次産業化地域では産業国土、農林水産関係の社会資本整備が過大、生活基盤関係は過少、都心化地域では産業国土、農林水産関係の社会資本整備が過少、生活基盤関係は過大、財政力指数が高い地域では総じて社会資本の過大整備は見られない、などの結果を得た。なお、当該研究の成果は「日本地方財政学会第13回大会」(2005年5月開催)において報告予定である。
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