二年計画で行なう実証的研究の初年度における取り組みとして、初めに企業の財務データ整理を行なった。特に物的資本ストックとともに土地ストックの変化を重視し、企業の事業収益性についても整理を行なった。これらのデータを用いて今後の分析を行なう予定である。データに関して注目すべき点は、サンプル企業の既存事業収益性である。バブル経済崩壊後にも、サンプル企業の事業収益性は、国債投資との比較で平均してプラスの水準を維持しており、投資機会がなく返済を優先させていたという議論に再考をもたらすものとなった。もちろん企業ごとの差異は大きく、今後の分析において他の代替的投資手段との比較や過剰債務問題の分析も必要となるが、企業の長期的戦略を見る上で重要な特徴が確認された。 データを用いた分析の初めに、連結決算と単独決算に関する比較を行なった。記述統計による確認とともに、同時点における単独決算と連結決算の差異に関して、また異時点間における単独決算の差異に関して分析を行なった。この分析により、企業・産業ごとの特性が確認された。土地など資産の時価会計(減損会計)導入に対応するため早めに対策を行なった企業などでは、特別損失による処理が見られた。これは企業分析を行なう際、企業の損益状況をこれまで以上に詳細に確認することが必要であることを示しており、また特別損失が企業設備投資に影響を与えていた可能性を示すものである。「退職給付に係る会計基準」も導入をされており、この影響についても今後分析を行なう予定である。続いて連結決算に基づく設備投資関数の推計と単独決算に基づく設備投資関数の推計を行なった。 これらの分析をもとに、次年度は連結会計に基づく企業グループの投資行動の特徴に関して分析を進める予定である。
|