研究概要 |
企業の設備投資活動に関して,単独決算が適用された時期と連結決算が適用された時期を対象に分析を行なった。特に連結決算(連結財務諸表)が中心となった平成11年4月以降,企業活動が受けた影響について企業財務データに基づいて分析を進めた。サンプルとして日本の製造業を代表する電気産業などを取り上げた。電気産業などに属する企業は多数の関連会社や子会社を抱えるケースがあり,会計制度変更の影響を大きく受けることが予想されるとともに,日本経済に与える影響も大きいことが予想されるためである。 単独決算(単独財務諸表)に基づく企業の投資活動は,先行研究の蓄積された分野である。今回の研究では企業の過剰債務と設備投資の関連を中心に分析を行なった。単独決算(単独財務諸表)を基準にした場合には企業の抱える過剰債務が設備投資に影響を与えていることが確認された。 連結決算(連結財務諸表)に基づく場合,上場企業(親会社)の抱える資産と負債・資本は,関連会社や子会社などの状況により単独決算(単独財務諸表)の場合と大きく異なる。連結決算(連結財務諸表)を基準にした分析では,関連会社や子会社の業績や負債・資本の状況が親会社の設備投資に影響を与えたことが確認された。特にグループとして過剰な債務を抱えている場合に投資が抑制されることが示された。またこのような関連会社・子会社の親会社への影響は会計制度変更以降大きくなっていることが明らかとなり,会計制度の変更が親会社の行動に影響を与えていたことが確認された。 サンプルとした電気産業などに属する企業においては,関連会社や子会社の状況が親会社の活動にも影響を与えており,連結決算(連結財務諸表)に基づいて企業グループとして評価を行なうことの重要性が改めて確認される結果が得られた。
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