研究課題
近年の金融機関の再編・合併は銀行業の効率性を高めているといえるのか、また、自己資本比率の強化に対応するためにおこなわれている資産証券化は銀行財務の健全性にどのような影響を与えているのか、計量モデルを使って実証研究することが本研究の目的であるが、平成16年度は前半部分の金融機関の効率性に焦点を当て、研究を進めた。具体的には、1990年代後半から2003年にかけて観察された日本と韓国の金融統合について分析した。両国では金融制度、財務項目、通貨単位等が異なるため、別々の論文において分析したが、金融機関の効率性の診断に近年よく利用されるようになった分析ツールである、包絡線分析(Data Envelope Analysis)という、関数形を仮定しないノンパラメトリックな手法を利用した。韓国の銀行業は、1997年の通貨危機後の銀行の閉鎖・国有化・統合を経て、経営が改善し、効率性が向上していることが明らかになった。また、金融持株会社に属する銀行や外資の保有割合の高い銀行の効率性が相対的に高かった。一方、日本の銀行業においては明示的な結果は得られなかった。1997年から1998年にかけての銀行危機、その後の金融統合の後、効率性の順序は数年の間に大きく入れ替わったり、銀行が決算対策をおこなう余地のある財務項目を分析に追加すると入れ替わるなど不透明さが残された。本研究の後半部分の内容である証券化については、クレジットデリバティブという新しい信用リスクを取引する商品について、分析を開始した。
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すべて 雑誌論文 (5件)
Economic Stagnation in Japan (a book published by MIT Press) (発表予定)
Korea Institute for International Economic Policy Working Paper (発表予定)
Journal of Money, Credit and Banking 36(5)
ページ: 965-968
証券アナリストジャーナル 3月号
ページ: 56-71