平成16年度は2度にわたってドイツを訪問し、5州(ベルリン、ヘッセン、チューリンゲン、ザールラント、ニーダーザクセン、ブランデンブルク)の州財務省および州内務省において、現行の相続税において不動産評価に用いられている土地標準価額の算定方法と実施状況について担当職員より聞き取り調査を行うと共に資料の収集を行った。また、土地標準価額の問題点やドイツの不動産税(日本の固定資産税に相当)への適用可能性について意見の交換を行った。さらに、3都市(マールブルク、ベルリン、ポッダム)においては、不動産税の徴収状況と問題点について聞き取り調査を行い、現在議論の遡上にのっている不動産税改革案(バイエルンとラインラントプファルツの2州による共同提案)の問題点と実現可能性について意見交換を行った。 上記の聞き取り調査と意見交換に加え、収集した資料を精査した結果、土地標準価額は、本来、不動産売買における購入者の保護や公正な市場取引の実現を目的として評価、公表されているものであるが、以下の2つの特徴を有しているがゆえに、ドイツ不動産税における課税標準算定の手段としても優れていることが明確になった。2つの特徴とは、第1に、一定期間における土地購入価額の平均値であるため、社会資本投資からの便益を示す指標として優れていることであり、第2に、不動産登記所に提出される売買契約書を利用するため、評価が正確であり、費用が低いことである。このことは日本の固定資産税における不動産評価に対しても重要な示唆となる。 研究2年目で最終年となる平成17年度には、市場取引の公正化を目的とした現行の土地標準価額制度と、社会資本投資からの便益を示す指標の詳細な差異について検討し、より優れた評価法とするための改善点について検討することを予定している。
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