長野県を中心に、香川県や徳島県などの小規模自治体の行財政運営の調査を実施し、これらの自治体の財政分析に基づいて、国庫補助負担金による過大な公共事業とくに公共下水道の建設などの負担によって自治体財政が圧迫されている一方で、地方交付税等の一般財源によって地域に見合った小規模公共事業、在宅福祉、地域自治組織の活用などの社会効率的な行政施策が展開されていることを明らかにした。そして、現在進められている「三位一体の改革」によって、これらの小規模自治体における地方交付税および臨時財政対策債が大きく縮減されることによる一般財源の圧縮が進むことをシュミュレーションした上で、このような傾向が今後も進むとすれば、これまで各自治体で取り組まれてきた創意工夫された施策を継続するための条件が失われ、地方財政はむしろ非効率の度合いを強める可能性があることを示した。さらに、このような地方財政縮減の状況をうけて進められている自治体関係団体(地方六団体など)による財政改革運動によって、国と地方の間の財政をめぐる政治的関係が大きく展開し、地方六団体が「国庫補助負担金等に関する改革案〜地方分権推進のための『三位一体の改革』〜」(2004年8月24日)を提案するなど、日本の地方自治史上からみても画期的な運動が展開されたことを評価した。また、自治体関係団体が各自治体の裁量が高まる国庫補助負担金の削減を求める一方で、地方財政需要が投資から経常へ変化していることを前提とした地方交付税改革とそれによる財源保障を共通して求めている点が、これまでの小規模自治体による財政運営の実践からも導き出されていると同時に、そのような改革を推進することによって社会効率的な自治体財政システムが構築される可能性があることをこの研究によって示すことができたといえる。
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