(A)両毛地方の事例 群馬県桐生の桑原家の史料を用いて、女工たちの就業態度を分析した。同家は女工たちに手機を使って絹織物を生産させていた。そのため、同家には、絹布の種類とその生産量を記した記録が残されている。だが、その記録を分析した結果、両毛地方の絹織物生産の特徴として、同家の女工たちは、多くの色の絹糸を複雑に組み合わせてさまざまな絵柄の絹布を生産していたので、彼女たちが各種類の絹布を一定量生産するのにどの程度の時間や手間を要したかを特定するのはきわめて困難であることが明らかとなった。そこで、両毛地方については、当初の予測と異なり、女工たちの就業態度を分析することには史料上の限界があると判断せざるをえなかった。 (B)泉南地方の事例 Carrot or Stick? Mill Girls' Work Attitude and their Employer's Policy in a Weaving Factory in Early Twentieth-Century Japanとして発表 明治40年代以降、泉南地方では、織物工場が数多く設立され、そこでは女工たちが力織機を使用して綿布を生産していた。こうした織物工場の一つである大阪府岸和田の泉州木綿株式会社の工場の史料には、女工たちの日々の生産量を記した記録が残されている。そこで、この記録を用いて、この工場の女工たちの就業態度を分析した。 泉南では、両毛地方と違って、たんに綿糸を交差させるという単純な工程によって綿布が生産されていた。そのため、女工が仕事に励めば、それだけ彼女が生産する綿布の量は増大するという関係が存在した。従って、綿布生産量の多寡は女工たちの就業態度を示す指標となる。またこの工場では、出来高給が支給されており、その賃金水準も記録されている。そこで、就業態度と賃金水準との関係を分析した結果、以下の事実が判明した。すなわち、賃金が上昇するほど、女工たちは怠惰となり、その綿布生産量は減少したのに対し、逆に賃金が低下しても、その就業態度は大して変化せず、綿布の生産量が減少するような事態はみられなかった。
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