本年度は、リストラクチャリングのひとつであるエクイティ・カーブ・アウトについて米国企業を対象とした実証研究を実施した。エクイティ・カーブ・アウトとは子会社を対象としたIPOのことであり、親会社がこれまで株式を100%所有してきた子会社を上場させ、所有する株式の一部を市場で売却することを意味する。エクイティ・カーブ・アウトがなぜ実施されるのかという問題に関してこれまで理論的、実証的な研究が実施されてきた。このうち、実証研究についてはエクイティ・カーブ・アウトを実施するというアナウンスメントに対し、株式市場はプラスに反応することが明らかとなっている。エクイティ・カーブ・アウトの実施がなぜ株主価値を高めるのかという問題に対してこれまで様々な主張がなされており、これらの主張の多くはエクイティ・カーブ・アウト後に生じる子会社の上場という状態が永続的であると仮定している。これに対し、Klein et al.[1991]はエクイティ・カーブ・アウトの実施後にM&Aなどのセカンド・イベントが実施されることを明らかにし、子会社の上場という状態が永続的でないことを指摘し、エクイティ・カーブ・アウト&セカンド・イベントを一連の「リストラクチャリング」と位置づけている。しかしながら、同研究はエクイティ・カーブ・アウト実施後になぜセカンド・イベントを実施しなければならないのか、あるいはこれらがなぜ株主価値の増大をもたらすのか、について明らかにしていない。 実証分析の結果、エクイティ・カーブ・アウト後のセカンド・イベントとして4つのイベントが存在すること、さらには各イベントによって株式市場の反応が異なることが明らかとなった。最後に、このような実証結果の解釈として、「オークション方式」によって当該子会社の売却を企図している企業がエクイティ・カーブ・アウトを実施するためであると考えられる。
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