本年度は、イタリアのカターニャ大学で開催されたEIASM(欧州マネジメント科学研究機構)の学会における報告を皮切りに、ボローニャ大学、トレント大学でも国内において調査した研究・調査の結果の一部を盛り込みながら、中小企業における起業家のネットワークについて報告をおこなった。イタリアでの3つの報告を通じ、ソーシャル・キャピタル論、知識マネジメント論、組織論における研究者から新たな知見やコメントを得て、日本と欧州における問題関心の違いや意見の交換をおこなうことができた。また、上記の報告によって得られた知見を再構成すると同時に、イタリアの中小企業の経営者を対象にインタビュー調査をおこなった。その結果は『国際ビジネス研究学会年報』と『組織科学』の2つの学会誌上で発表した。また、国内における商業集積の事例とした調査からは、企業間の相互調整能力を可能にするコーディネーション能力について新たな知見を獲得し、横浜市立大学経済研究所紀要『経済と貿易』において発表した。 本年度は、文献調査とインタビュー調査から、日本とイタリアにおける経営者のネットワーク形成の同質性と異質性について把握することが大きな目的であり、とりわけ起業のプロセスにおいてインフォーマルなネットワークの形成のあり方に違いがあることが確認されつつある。この点については、来年度の調査と研究の中で明らかにする予定である。
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