本研究の目的は、日本企業における人的資源管理施策の質的転換にあたって、業績連動型の資源管理をキーワードにしてその導入及び運用について、実証的に分析することである。具体的には、日本企業において業績連動型報酬管理制度がどのような把握され、そうした制度導入が進んだ企業において、具体的にどのような施策が導入されているかを明らかにすること、業績連動型報酬管理制度がうまく導入されている企業とそうでない企業を比較することで、何が成功要因であり、何が障害となっているかを明らかにすること、そして業績連動型報酬管理を導入、定着させるプロセスを従業員の意識変化から把握し、従業員に円滑に受容される制度導入の条件を明らかにすることである。プロジェクト初年度である今年度は、国立国会図書館、学術情報センター社会科学系指定図書館等の諸機関での資料検索及び、インターネット上の諸データベースを通じて資料収集を行うことと企業担当者へのインタビューを行うことで一次データを収集することを目的として研究を行った。その結果、我が国において成果主義人事制度の導入がバブル崩壊後の経済的要因をはじめ、IT化や価値観の多様化といった社会的要因、国際競争の激化といった国際化要因、労働力供給の過剰感といった労働市場要因によって、1990年代半ば以降急速に導入されてきていることが明らかになった。同時にその定着には多くの企業が苦労していることも明らかになった。また、その導入の正否には制度自体の問題ではなく、その運用に課題があることがわかった。とくに成果の評価という問題にその原因があり、従業員の納得をえることが重要であることが指摘できた。以上のような文献資料の分析結果から、次年度以降は従業員の納得の獲得できるような成果主義の導入及び運用のためにどのような要因が影響を与えているかを実証分析するべく調査票の設計を行いたい。
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