本研究の目的は、業績連動型の人的資源管理をキーワードに、その導入及び運用に関して、実証的に分析することである。具体的には、日本企業において成果主義がどのような把握され、どのような施策が導入されているかを明らかにすること、成果主義がうまく導入されている企業とそうでない企業を比較することで、何が成功要因であり、何がその障害となっているかを明らかにすること、そして成果主義を導入、定着させるプロセスを従業員の意識変化から把握し、従業員に円滑に受容される制度導入の条件を明らかにすることである。 今年度は、日本企業における成果主義導入の実態について、実証データを使って分析した。その結果、成果主義の導入・定着に必須である従業員の納得を公正としてとらえれば、彼らの公正感を高める要素は、評価者への信頼、評価プロセスの公開、結果のフィードバック、制度の見直しである。信頼できる上司が明確な基準や方法で、仕事ぶりを評価し、その結果をきちんと本人にフィードバックするという基本的な部分が従業員の公正、ひいては納得を生み出すことが明らかになった。 また、公正感の高い従業員ほど、業績志向で、業績を上げるために自分自身のスキルアップに努める傾向が確認された。つまり成果主義の導入に際して、従業員の公正感を高めることが従業員の望ましい方向での行動変化を促進し、ひいては企業業績の向上につながるということである。この公正感を高めるのが先に指摘した4つの公正要素であり、それらをいかに確保していくかが成果主義の運用に最も重要であることが指摘できる。
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