研究概要 |
近年、実務界におけるIT技術とくにインターネットの普及と活用は刮目に値し、経営学分野でもIT技術が企業のパフォーマンスに与える影響についての研究が活発に行われている。しかし既存研究では、もっぱらIT技術による企業内部の変化のみを分析対象としてきた。そもそもインターネットには、物理的・地理的に離れた人や組織を結びつける開放的なネットワークとしての特徴があるが、こうした特徴が企業・組織に及ぼす影響については看過されてきた。そこでこの研究では、企業外に存在する技術者やユーザが、インターネット・IT技術を利用することによって公式組織(Barnard, 1938;1968)として機能するようになる「ユーザの組織化」とも言うべき現象に着目し、それが製品開発活動、イノベーションの実現と普及にどのような影響を及ぼすのかについて、調査・分析を行ってきた。 今年度は、インターネットを積極的に活用している事例として、オンライン・ソフトウェアの開発者を対象とし、アンケート調査の企画・設計と、データ収集のためのシステム開発を行った。2005年度の中ごろに、アンケート調査の対象者として、オンライン・ソフトウェアの開発者のデータベースを作成した。このデータベースを利用して、現在、同システムを運用中であり、アンケート・データの収集を行っている最中である。 また、オンライン・ソフトウェアの開発スタイルとの比較分析を行うために、オンライン・ソフトウェアの開発者以外にも、大規模システムや組み込みソフトウェアの開発を行っている企業、Webベースのサービスを開発・運用している企業の従業員(エンジニア等)に対してもインタビュー調査を実施した。 なお、昨年度に投稿した英語論文は、現在審査プロセス上にあり、近々再審査を受ける予定である。その他にも、藤田(2005)や藤田・生稲(2005)等として成果を公表している。
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