今年度はプロフェッショナルに関する文献リサーチを行い、今後の調査研究に必要となる分析枠組構築を試みた。これと並行して次の作業も行った。 (1)2000年に実施した大手監査法人の監査チームに関するデータ分析(基礎データの編集は外部委託)を行い、会計士による非公式組織内ネットワークの存在を明らかにするとともに、それが監査業務遂行だけでなく会計士のプロフェッショナルとしての人材育成においても重要な役割を果たしている可能性を指摘した。この成果は「大手監査法人における組織内ネットワークに関する考察」にまとめ、『経済集志』第75巻1号日本大学経済学部(2005年4月発行予定)に掲載決定となっている。 (2)9月にシリコンバレーに出張し、ベンチャー企業やベンチャーキャピタルで活用するプロフェッショナルたちに、これまでのキャリアや活動上必要となる能力や人的ネットワークについて調査した。この作業により、プロフェッショナルは高い専門能力をもつがゆえに組織化は不要という通説に反して、実際には高い能力をもつからこそそれを最大限に活用するための組織化が必要ということを確認した。 (3)プロフェッショナルの管理と活用において非常に重要な意味をもつパフォーマンス(成果)と動機づけの関係を理論的に考察した。そしてここから導き出されるプロフェッショナルの管理上の課題として、一般従業員とは能力の点でも働き方の点でも異なるプロフェッショナルたちを雇用する場合、彼等が組織での協働を通じて出す成果を組織としてどのように評価し、どう処遇していくのが望ましいのかを議論した。この成果は「パフォーマンス向上に対する満足と不満足の影響」にまとめ、産業組織心理学会年次大会(2004年9月11日〜12日日本大学経済学部にて開催)で発表した。 次年度はこれらの成果をふまえて、プロフェッショナル組織の調査にあたる予定である。
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