今年度は大手会計監査法人の調査およびインタビューを通じて入手した5年分の時系列データを分析し、次の発見をした。 (1)大手監査法人内部では業務割当を通じて複数の非公式的に業務グループが形成されている。 (2)(1)で発見した業務グループはいずれもパートナーと呼ばれる部内のトップ層を中心に形成されているが、このどこに属するかによって中間層であるマネジャーの内部昇進に違いが生じている。 以上の発見は、プロフェッショナルは能力を武器に組織独立的に活動し、自由にキャリアを形成できるという従来のプロフェッショナル研究の主張を覆すものであり、プロフェッショナルのキャリア形成を議論する上で重要な意味をもつ。この発見から「プロフェッショナルはプロフェッショナルであるがゆえにむしろ組織独立的ではいられない。」という従来の主張と正反対の次のような主張を導き出すことができる。その理由は次のとおりである。プロフェッショナルは能力があるがために通常の組織従業員よりも多くの権限と責任を委譲されている。そのことが、職務の獲得、割当、遂行、結果に至る全プロセスでの自由度を高めることになり、職位上位者がパワーをもちやすい状況を生み出している。その結果、中間層以下のプロフェッショナルたちはどのメンバーの下につくか、誰のグループに属するかによって自らの活動内容やキャリアの方向性を決められることになってしまう。 次年度は、プロフェッショナルたちが形成する非公式グループの分析をすすめ、プロフェッショナルのキャリア形成や組織内管理のあり方について提言を行うことを目標とする。
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