本年度の研究は、実証面では2つの点から当該テーマに対してアプローチした。 第1に、前年から継続して、対境担当者となる開発者が持つべき能力を特定し、そうした能力を組織内で開発・育成していくためにはどのような仕掛けが有効であるのかについて、主としてヒアリングを通じて仮説設定を行った。また、数回の研究会を開き、当該テーマを調査するための調査票設計を行った。並行して、協力企業の選定と依頼を行った。なお、調査の実施は来年度行う予定である。 第2に、ある先端技術企業における研究開発部長及びトップマネジメントへのヒアリングを中心として、新製品開発の際に彼らが果たした役割と、複数企業間で製品開発を進めていく上でコアとなるであろうプロセスについての検討を行った。 理論面では、本年は、組織間関係を再編成する際にトップマネジメントとミドルマネジメントが果たす役割や、組織的装置についてのレビューを行った。 まず、既存の組織間関係論をアイゼンハート&サントス(2005)にしたがって、4つの分析に分類した。それぞれ(1)取引コスト理論、(2)パワー論、(3)組織能力理論、(4)イデオロギー論である。 次に、戦略的顧客インターフェイスの構築を考察する上で、既存の組織間関係論は分析単位を組織においており、そのため、具体的なプロセスを記述するのには不十分であることを指摘した。 戦略的顧客インターフェイスの構築においては、特に大きな環境変化に直面した場合には、専門の担当部署を通じて、組織内外の連携を深めることが重要になる。
|