いかにして自社ブランドをロングライフ化し、ブランド力を高めるためにはどうすればよいか、という課題を抱えている。ブランド・マネジメントにおいては、消費者にとってのブランドの意味(役割、価値)を理解することが不可欠であるとともに、当該ブランドが消費者自身との自己関連性を持つ存在となることが、ブランドの独自的、差別的優位性の源泉となる。それには、ブランドが消費者の自己と意味のある形で結びつくことと重要である。そこで、本研究では、消費者のアイデンティティ発達とブランドの関係に焦点を当てた。アイデンティティ発達段階においては(例えば高校生、大学生等)、ブランド性のあるもの(ブランド化された製品)に意識的・無意識的に自分を投映し、自分らしさを表現したり、自分という存在を確認したりすることが多い。故に、ブランドの自己表現的機能は企業側・消費者側双方に対して重要な役割を果たす。従って、「ブランドによる自己表現」を焦点とし、社会(文化、下位文化、準拠集団等)で共有される価値として「ブランド(ブランド性のあるもの>」を捉え、自己表現には他者への自己呈示と自己完結的な自己表現の2側面あるという着想の下、消費者が社会の中でブランドをどのように用い、消費者自身にいかなる影響があるかを自己の側面からその変容(発展、維持、強化)プロセスを明らかにする研究を行った。 具体的には、ブランドによる自己表現に関わる既存研究として、ブランドの価値に関する研究をはじめとし、消費者行動における自己研究、象徴的消費、顕示的消費、心理学・社会心理学における関連研究のレビューを行い、本研究の枠組みを提示し、インタビュー調査や自記式調査を行い、定性データ、定量データを入手し、分析を行った。しかしながら、結果的に定性的な分析が主となったため、定量的な分析を行う上で残される課題は多い。
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