昨年度の研究に引き続き、「コミュニケーション論」にかんする先行研究をサーベイし、消費者行動論に対する適応について検討を行った。特に、カルチュラル・スタディーズにあるような、受け手が積極的にコミュニケーション過程に関わるモデルを参照しながら、現代の消費者行動のパターンを位置づける試みと、消費文化にかんする文献を元に消費における文化や社会とのかかわりについて考察を行った。また、近年盛んになっている「マーケティング・コミュニケーション」といった概念について、『コミュニケーション論」との関係性という点に着目しながら、その方法論にかんする検討を行った。 「マーケティング・コミュニケーション」という考え方は、企業が消費者に対して一方的に商品を提示するのではなく、そのプロセスにおいて消費者を「味方」に取り込むという点にある。これは、消費者を所与のものとする経済学的な考え方よりは前向きである。しかし、消費者自体がアクティブな主体であることを鑑みれば、企業が消費者を取り込むことは当然の動きであるし、マーケティング研究でも、触れられなかったわけではない。今年度は、その点について、マーケティング論における考え方と、消費社会論や社会学的なコミュニケーション論における考え方との相違性について検討しながら、消費者行動モデルの枠組みについて考察を行った。また、消費者の主体性や多様性という点についても、消費者の生活実態にかんする質的な調査によって明らかになってきている。今年度の研究では、この点について、消費者の生活実態について、予備的ではあるが、日記式の調査を行った。また、企業における消費者とのコミュニケーションに対する考え方、インターフェイスの確立手法についても、具体的なケースなどをもとに検討を行った。 研究実績の発表にかんしては、昨年度の研究を中心にしながらではあるが、論文を1本執筆し発表するに至った。
|