今日、ITの発展とともに、多くの革新的な新製品が市場導入されている。そのような新製品のなかには、「情報」をキーワードに、従来から存在する複数の製品カテゴリーにまたがるような特性をもつものが少なくない。製品カテゴリーをまたがるような特性を持つ製品が導入されるようになってくると、それまで消費者がどのような製品の経験をより多く積んできたのかによって、新製品を採用する上での理解度が消費者によって異なり、その結果として、採用のタイミングも異なってくるものと考えられる。このような問題の背景をふまえて、本研究では、新製品が普及する過程において、消費者間の特性の違いが、新製品の採用過程や普及過程に対してどのような影響を与えるのかということを研究課題として分析を行った。 平成17年度は、新製品の中でもとりわけデジタル家電と呼ばれる製品群に焦点を当て分析を行った。今日、急速な普及が見込まれているデジタル家電は、デジタル機能を中心として多くの既存製品カテゴリーの機能を共有しているという点で、従来の耐久消費財とは異なる。それに伴って、デジタル家電の購買に際しての消費者行動のあり方も異なってくる。本研究では、今日のデジタル家電に関わる消費者行動の特徴を踏まえ、新製品の採用に関わる消費者行動研究を概観した上で、今日の新製品に対する消費者行動を理解するための理論枠組みを提案し、最後に、新製品の導入に関わるマーケティング戦略に対する示唆を行った。 今年度の成果は、「デジタル家電の普及過程における消費者情報処理とマーケティング戦略」として『経営経理研究』の誌上で発表した。
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