本研究は、営業活動の生産性とその規定因を探ろうとする研究代表者の一連の研究の一部である。特に本研究では、営業担当者の持つ、社内外のネットワークが営業活動の生産性に与える影響について研究を進めている。 営業担当者の持つ取引に関連する人的ネットワークは、営業担当者の取りうる行動を規定する。例えば営業担当者の行動への上司によるエンパワメント、スタッフ部門からの事務的サポート、物流部門との人的なつながりなどは、営業担当者の能力や権限を補完する効果を持つ。また、社外の人脈が新規顧客開拓の際に潜在顧客との接触の可能性を左右することもある。ここ数年「マーケティング・パックの商品化」であるとか、そのマーケティング・パックの形成を司る「司令塔としての営業」といったことが、営業改革のキーワードにもなっている。それはまさに営業担当者が取引ネットワークをいかに構築して管理するかという問題に他ならない。こうした人的ネットワークが営業活動の成果に影響を与えると考えるのは、極めて妥当なことであろう。 研究初年度である平成16年度は、理論的研究を中心に行った。現在、営業生産性を規定するようなネットワーク構造について、いくつかの研究仮説を得て、来るべき実証研究に備えている。また、営業活動の生産性に関するデータは理論的には想定可能でも、実際にデータを収集するのは大変困難である。どこの企業にもあるような簡単なデータから、生産性を推測するような研究方法の開発も視野に入れ、生産性尺度の洗練についても研究を進めている。
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