研究概要 |
本研究は,資産負債観に基づく会計基準への国際的なコンバージェンスのすでに起こった未来として税効果会計基準を位置づけ,収益費用観から資産負債観に基づく税効果会計基準への国際的な転換の論理性の検証,および国際会計基準第12号「法人所得税」の改訂に際して公表された再公開草案第49号に寄せられたコメント・レターの分析を通じた関係国の選好の分析を行い,資産負債観に基づく会計基準へ収斂の基準論的意義と関係国の選好あるいは賛否との関連性の分析を行うことを1つ目の目的としていた。これについては,現在,コメント・レターの要約および類型化,分析を行っている。 また,繰延税金資産の回収可能性の考証および回収可能性の判断に係る決定要因の分析を行うことを2つ目の目的としていた。平成16年度においては,この予備的調査として,平成11年3月期に「税効果会計に係る会計基準」を早期適用した一般事業会社の特徴の探索を行った。すなわち,早期適用を選択した企業と強制適用を選択した企業について,税金負担率,配当余力,評価性引当率,連結子会社数を説明変数としたプロビツト分析およびロジット分析を行い,この結果,評価性引当率の低い(繰延税金資産の回収可能割合の高い)企業ほど早期適用を行うという結果が得られた。この結果は,将来の収益力が良好であるという相対的に企業自身にとって有利な情報が開示できると判断した企業が早期適用を選択したものと解釈される。これを踏まえ,2つ目の目的を実施するため,現在,サンプル企業の抽出とデータの収集,モデリングを行っている。
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