研究概要 |
本年度は,2年間の研究期間(平成16年度および17年度)のうちの第1年度目である。企業結合会計あるいは連結会計では,JVを,「契約に基づいて複数の独立企業によって共同支配された企業」と定義し,そこでは「共同支配契約」が存在することが絶対的な要件となっている。本研究は,当該定義が,JVの実態に適合するものなのかどうか,さらには財務諸表利用者に資する情報を提供するものとなるのかどうかを,いくつかの実態調査を通じて明らかにすることを目的としている。 本年度は次の調査を実施した。証券アナリストは,財務諸表利用者のうち,最も洗練された利用者として位置づけられる。そこで証券会社・銀行等に勤務し,かつ,国内株式・債券分析業務に携わる証券アナリスト30名を選定し,JVを含む事業提携の情報をどのように入手し,かつ,それらをどのように利用しているのかについて,聴き取り調査を実施した。 その結果,次のことが明らかになった。すなわち,アナリストは企業取材等を通じて,重要な持分法適用会社の非開示情報(経常利益,営業利益,売上等)の入手につとめており,その公的開示を望んでいる。そこでは「共同支配契約」を満たすJVだけでなく,広く,持分法適用会社全般の情報入手に主眼が置かれている。したがって今回の調査を通じて,「共同支配契約」を満たすJVにかぎって情報開示を求める現在の制度的なあり方は,その有用性に疑問がもたれるということが明らかになった。 この他,証券取引所のリリース情報において,「提携の締結・解消」として発表されたケースを調査し(2001年度〜2003年度),241のJVが識別された。来年度はそれらのJVに対してアンケートを実施し,上述の定義が,実態として適合しているのかについて調査を進める予定である。
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