本年度の研究実績は次の通りである。第一に、外注加工費管理に関連する管理会計研究の包括的調査である。とりわけ、近年の欧米を中心とする組織間マネジメント・コントロールに関連する既存研究の調査である。文献調査の結果、外注管理はそれ自体独立して実施されているわけではなく、サプライヤーとの取引関係に大きく規定されていること、および、こうした組織間関係の内容とそこでの管理会計の役割の検討が、管理会計研究の重要課題の一つであることが確認できた。第二に、過去に実施した質問票調査の追加的な分析である。データ分析の結果、バイヤーの取引モード、情報共有、企業業績などの項目に関して、日本企業のバイヤー・サプライヤー関係の現状を把握することができた。第三に、日本企業を対象としたインタビュー調査の実施である。インタビュー調査の結果、協力会の解散、海外調達の進展、ISOシリーズの活用など、日本企業が直面する外注加工費管理の諸課題について把握することができた。 また、本研究の研究実績は、下記の雑誌論文3本(関東学園大学経済学紀要:1本、桃山学院大学環太平洋経営研究:1本、関東学園大学紀要Liberal Arts:1本(英文論文))のほか、次のかたちで外部に発表している。第一に、ワーキング・ペーパー(神戸大学大学院経営学研究科ディスカッション・ペーパー:1本(英文論文))による研究成果の発表である。第二に、国内会計学会(日本会計研究学会全国大会:1回、日本会計研究学会関西部会:1回)を通じた研究成果の発表である。これら一連の研究実績の発表によって、国内の会計学研究者から多くの知見を頂戴することができた。 なお、来年度は、以上の本年度の研究実績を踏まえながら、本研究課題の目標を達成するべく、更なるインタビュー調査の実施、質問票調査の設計・開発と実施、国際学会における研究報告などを予定している。
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