本研究では、生産マネジメント情報が利益計画段階においてどのような役割を果たしているかについて検討している。この課題を検討するにあたり、本年度は以下の二つの方法からアプローチした。 第一に、前年度に行った生産マネジメントの業績測定に関する検討を踏まえて、企業においてどのように多種多様な生産マネジメント情報を測定しているかについて生産管理領域や品質管理領域などの文献渉猟や情報収集を行い、その内容について整理した。その際に、この領域の先駆的研究者であるペンシルバニア大学ウォートン校のC.Ittner教授やアメリカ会計学会において先端の研究に関する情報収集や意見交換を行った。こうした知見を踏まえ、具体的には、納期・数量に関する生産マネジメント情報、品質に関する生産マネジメント情報、フレキシビリティーに関する生産マネジメント情報をとりあげて、それぞれの情報を収集するための尺度や測定方法について検討をおこなった。これらの情報は生産現場で収集し、工程を改善する目的で測定されているために、そのまま集計・管理するのが困難である。利益計画と直接的に関連させるには、設備投資など企業が推進する個々のプロジェクトや活動と連動させて測定する必要性がみられた。なお、これらの成果については、日本会計研究学会、日本管理会計学会においての報告や論文の形で公表されている。 第二に、利益計画、とくに資本予算の策定段階において、生産マネジメント情報がどのような役割を果たしているかについて、東証一部に上場している建設業を除く製造業に属する企業836社に対し質問票による調査を行った。現在その結果のとりまとめを行っている。
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