本年度、米国における業績報告の実務、制度面の全般的動向についてのサーベイと関係者へのヒアリング調査が中心となった。その概要は以下のとおりである。 1.国際会計基準審議会の会計測定のフレーワークの内容を、米国財務会計基準設定機関FASBのフレームワークと比較しながら、検討を加えた上で、業績報告問題に関する内外の先行研究についてサーベイを行い、IASBにおける議論の動向とその特徴について整理した。その結果、IASBとFASBではそもそも時価評価の対象領域について異なる考え方をもっていたこと、まさに、そのことが、業績報告のあり方についての考え方が相違していることの基底的な要因となっていることが明らかとなった。これらの研究調査ついては、論文を作成し、すでに公表済みである。 2.1990年代以降の業績報告とりわけ損益計算書における報告実務の傾向を、文献・資料を用いて調査を行った。その結果、米国では損益計算書におけるirregular item(非経常項目)あるいは時価評価に伴う評価損益の取り扱いについてとくに問題となっていること、このことが米国における業績報告に関する議論の一つの背景となっていることが明らかとなった。 3.近年の米国における業績報告に関するFASBでの議論の動向を調査するため、これまでのボードミーティングの議事録を整理し、その上で、2度にわたり渡米し、FASBのボードメンバー等に対するインタビューを行った。このインタビューによって、FASB議論のプロセスが時系列的に理解でき、IASBにおける議論の内容との相違、さらには両者の間の考え方の隔たりの意味が明確となった。
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