(1)平成16年度に十分明らかにできなかった問題点や渡米して入手した資料を中心に検討を加えた。とくに、損益計算書におけるirregular item(非経常項目)あるいは時価評価に伴う評価損益の取り扱いについてとくに問題となっていることに留意しながら、米国の会計基準設定動向について考察した。 (2)米国企業のアニュアルレポート等にもとづき、これまでの損益計算書の様式の変化について考察した。従来、米国では、「無区分式」損益計算書が多かったのに対して、近年では逆に「区分式」損益計算書が多くなってきている。この点に着目しながら、いくつかの米国企業の損益計算書の様式の変化についてケース・スタディを行った。 (3)これまで、米国会計原則において、「業績」ないし「業績観」がどのように論じられてきたのかについて、「当期業績主義対包括主義」論争に着目しながら、検討を行った。 (4)業績報告問題に関する各国の動向、とくにアジア諸国での動きを知るため、シンガポールの職業会計士団体主催のワークショップに参加すると同時に、現地でヒアリング調査を行った。 (5)2年間の研究の総まとめとして、米国における業績報告問題の動向についての論文を執筆した。米国では、依然として当期業績主義と包括主義に関する論争が燻り続けていること、その基底には、経営者の業績を重視すべきか企業の業績を重視すべきか(あるいは両者を区別すべきかどうか)という論点が横たわっており、こうした論点は、比較可能性の解釈や監査のあり方など会計・ディスクロージャー制度のあり方そのものにかかわる問題としても提起されていることが明らかとなった。この点を指摘して、米国と国際会計基準との業績報告の考え方の相違の背後にある会計思想の相違を明確にした。
|