本年度は、系列分析の分析手法について、分析手法の基本的な理解とその社会学的応用の可能性について検討してきた。特にイベント構造分析と最適マッチング分析を取り上げ、これらの分析手法の社会学的応用可能性を検討した。 まずイベント構造分析ついては、民俗学の婚姻儀礼のデータを基に、イベント構造分析による分析をおこない、「婚姻儀礼のシンタックス」という論文にまとめた。民俗学のデータをフォーマルな分析手法によって再分析することで、婚姻儀礼のパターンと社会的な意味を、より明確に示すことができ、社会学的データへの応用可能性を確認した。 また最適マッチング分析については、職業経歴データ、家の歴史のデータに適用することで、社会学的な応用可能性について検討した。具体的には、職業経歴データについては、「職歴パターンの分析」および「最適マッチング分析におけるデータの作成」の2本を論文にまとめた。さらに家の歴史のデータについては、日本社会学会で「山村集落における家の継承」という題目で報告し、「山村集落の家族変動」という論文にまとめた。職歴データ、家の歴史データについても、どちらも既存研究は多いが、従来系列をまとめて分析することができなかった。最適マッチング分析よってはじめて系列全体を分析することを可能としたことで、従来の分析では明確に明らかにされてこなかった系列全体の特徴を明らかにすることができた。 以上、イベント構造分析、最適マッチング分析を用いて、系列データを分析することで、社会や個人の動的な変化を捉え、その中からある特定の社会状態、個人状態を社会学的に分析する上で、その以前の経過(系列)の重要性をあらためて発見した。
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