本研究の目的は、人びとが日本社会の階層状況をどう認知し評価しているのか、またそうした認知や評価が、主に教育を媒介した格差拡大にどのように影響するのかに関して、地域社会(岩手県)の特性を踏まえながら実証的に検討することにある。 平成16年度には、第1に、先行研究の検討と岩手県における高校生の進路状況の整理を行った。社会階層研究や、教育社会学における進路選択・教育アスピレーションに関する文献の検討を行うとともに、資料収集や教育関係者(高校、教育委員会)へのヒアリングによる情報収集を実施した。 第2に、人びとの社会認知や将来設計(進路選択や将来の居住地に関する希望等)における地域特性(地理的条件、教育・文化環境等)の影響を明らかにするため、2004年6月から7月にかけて岩手県の4地域で合計15の高校を選び、各校で3年生3ないし4クラスの生徒と保護者(両親)を対象に意識調査を実施した。調査方法は、高校生はホームルーム等を利用した自記式集合調査、保護者は自記式配票調査である。最終的な有効回答数は、盛岡地域(6校)、県北地域(3校)、県南地域(3校)、沿岸地域(3校)の合計で、高校生1729名(回収率91.6%)、父親1334名、母親1565名であった。 第3に、調査終了後、エディティング・コーディング作業を経てデータを完成させた後、各高校別の基礎集計結果(学校別集計)と、全体データにおける主要項目に関する調査結果の速報(対象高校生と保護者全員向けの第1次報告書)を作成し、2005年2月に全高校に配付した。 次年度以降は、補足的な資料収集や教育関係者へのヒアリングを行いながら、このデータをさらに詳しく分析していく。
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