本研究の目的は、人びとが日本社会の階層状況をどう認知し評価しているのか、またそうした認知や評価が、主に教育を媒介した格差拡大にどのように影響するのかに関して、地域社会(岩手県)の特性を踏まえながら実証的に検討することにある。 平成17年度には、第1に、16年度実施の意識調査(岩手県内の4地域で合計15の高校の3年生1727名と父親1334名、母親1565名が回答。高校生の回収率は91.5%)のデータ分析に、本格的に着手した。特に、県庁所在地であり複数の大学がある盛岡地域と県北部の二戸地域との比較から、盛岡地域の高校生が自己実現を求めながら県内・県外を問わず進学先を検討していること、二戸地域では親が県内での進学・就職を期待するのに対して高校生は県外への流出によって自己実現を果たそうと考えていること等を明らかにした。 第2に、人びとの社会認知や将来設計(進路選択や将来の居住地に関する希望等)における地域特性(地理的条件、教育・文化環境等)の影響を明らかにするため先行研究の整理・検討を進めた。階層状況の認知及び公平性についての評価に関する研究や、若者の進路選択に関して各地で実施されている調査研究を検討した。 第3に、岩手県内の高校における進路状況や、高校での進路指導の実態について、補足的に資料収集をおこなった。 最終年度となる平成18年度には、さらにデータ分析と高校教員へのインタビュー等の質的補足調査を進め、成果をまとめる。
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