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2004 年度 実績報告書

生物の「語り方」にみる人と自然の関係性に関する環境社会学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16730264
研究機関兵庫県立大学

研究代表者

菊地 直樹  兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 講師 (60326296)

キーワードコウノトリ / 語り方 / 多元的語り / かかわりの歴史性 / トキ / 日常と非日常 / 野生復帰
研究概要

コウノトリの野生復帰事業が進む兵庫県但馬地方で、かつてコウノトリと接して生活してきた人々から、「語り」を聞き取る調査を実施してきた。「語り方」を解析して、自然再生のシンボルであるコウノトリは、保護よりも日常生活と結びつき、害鳥、瑞鳥、ただの鳥などと「多元的」に語られ、コウノトリを語ることによって人と自然の日常的な関係性の諸相が紡ぎ出されることが明らかになった。
これは(1)但馬の地域性によるのか、(2)コウノトリという種の特徴によるのか、という問題関心に基づき、野生のコウノトリが数ヶ月間定着した亀岡市、我孫子市、野生復帰を目指している佐渡市のトキに関する聞き取り調査を実施した。
かかわりの歴史がない亀岡で、珍しい鳥という非日常として語られた。他方、「亀岡コウノトリの会」が発足し「コウノトリが教えてくれた」と非日常を通して地域の日常を見直す「地域再発見の語り」もみられた。
我孫子市では、鳥の博物館と友の会がモニタリングを行っていた。100年以上前にコウノトリとのかかわりが切れた当地でも、珍しい鳥として語られた。バードウォッチングという「観察的語り」であった。
かかわりの歴史がない地域では、日常生活と結びついて多元的に語られることはなく、人と自然の関係性が紡ぎ出されることもなかった。これは、人間の生活と重ならない越冬期の飛来であったことを考慮する必要がある。注目したいのは、コウノトリが外見や希少性から非日常性を帯びている一方で、生活域が人のそれと重なるため、地域再発見の語りのように、日常を問い直させるポテンシャルをもった生物であることだ。
佐渡市では、佐渡トキ保護センター、新潟大学トキ・プロジェクト、NPOなどが活動している。トキは棚田などを主な生息域とするため、かかわりが相対的に薄く、かつてトキと接しながら生活してきた人々が少ない。他方、現在、様々なNPOがトキに関する活動を行っており、科学や島づくりなどの視点から、トキが語られている。
かかわりの歴史性、行政の政策、地域の社会構造などによって、同じ種でも「語り方」が異なること、野生復帰や自然再生という同じ価値が付与されても、生息域の違いやかかわりの歴史性などによって、「語り方」が異なることが明らかになった。さらに比較研究を進めることが必要である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2005 2004

すべて 雑誌論文 (3件)

  • [雑誌論文] 地域再生としての自然再生への視点2005

    • 著者名/発表者名
      菊地直樹
    • 雑誌名

      兵庫県立大学自然・環境科学研究所田園生態保全管理研究部門/兵庫県立コウノトリの郷公園田園生態研究部 資料 12

      ページ: 44-45

  • [雑誌論文] 多元的現実としての生き物:兵庫県但馬地方におけるコウノトリをめぐる「語り」から2004

    • 著者名/発表者名
      菊地直樹
    • 雑誌名

      生き物文化誌 ビオストーリー(生き物文化誌学会) 1

      ページ: 110-122

  • [雑誌論文] コウノトリの野生化に向けた取り組みと施策の展開2004

    • 著者名/発表者名
      内藤和明, 菊地直樹, 池田啓
    • 雑誌名

      農村計画学会誌 23・3

      ページ: 227-230

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公開日: 2006-07-12   更新日: 2016-04-21  

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