1、14名のシングルマザーを対象にした就労困難性に関する聞き取り調査の結果を分析した。U・ベックは、リスク社会のリスクのひとつとして、専業主婦が離婚によって新しい貧困に苛まれるという状況に着目しているが、本調査においても同じ様な状況が見られた。その他、本調査では、就労支援などに関する福祉情報がシングルマザーに十分に行き届いていないという問題が明らかになるとともに、幼い子どもはできるだけ親が面倒を見るべきだという「子育て観」がシングルマザーの就労形態に影響していることが明らかとなった。 2、あるシングルマザー(Aさん)がなぜ11歳の実子を餓死させてしまったのかを、U・ベックのリスク社会論とP・ブルデューの社会的排除論にもとついて分析した。本研究では、子どもの餓死の理由は、不安定な就労の他に、福祉事務所や母子寮(現在の母子生活支援施設)といった福祉の「場」における否定的な経験、及び家族、風俗店、地域といった複数の「場」からの排除によるものであることが明らかとなった。その上で、複数の「場」からの社会的排除をリスクの輻輳と個人化として捉えることの重要性について明らかにした。 3、シングルマザーになった時点において、シングルマザーの就労を困難にしている要因(学歴、資格、キャリア、子育てのサポート、子育て観など)を明らかにできるような調査票を作成し、岡山県と広島県のシングルマザー330人を対象にアンケート調査を実施した。 4、フランスで、社会的排除に関する資料とフランスの母子福祉政策に関する資料を収集するとともに、フランス人の研究者と現在のフランスの母子福祉政策の状況について意見を交わした。
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