1.シングルマザーを対象に行ったインタビュー調査(調査方法はP・ブルデューの「社会分析」を使用)とアンケート調査をもとに、リスク社会におけるシングルマザーの就労実態について明らかにし、「リスク社会とシングルマザーの就労-『家族の個人化』と『グローバリズム』-」として論文化した。この研究から明らかとなったことは以下の通りである。不安定な雇用に関わるリスクを回避するために、正社員になりたいというニーズや、専門的な仕事や事務職に就きたいというニーズは比較的高かった。また、「キャリアアップしてもっと豊かな生活がしたい」、人も比較的多かった。だが、一方で、「何とか今の生活水準が維持できれば十分である」と考える人も少なくなかった。安定した就労に就いているためにこうした考えをもつ人もいるが、多くの人は、「幼い子どもがいる女性の仕事は所詮このようなもの」と、安定した仕事に対して「諦め観」を抱いている。この諦め観め背後には労働市場における女性が不利な立場にあるという社会構造上の問題が存在するが、この社会構造上の問題と関わって、諦め観の背後には、(1)幼い子どもはできるだけ長く母親が面倒をみなければならないという女性労働に対する意識と(2)就労を困難にさせる家族のリスクを一人で受け止めなければならない状況が存在することが明らかとなった。 2.シングルマザーの就労支援を行っている日本のNPO3ヶ所と韓国のNPO4ヶ所に対する就労支援に関するインタビュー調査をもとに、日韓のシングルマザーの状況、就労支援政策、NPOによる就労支援の現状と課題、そして今後の就労支援のあり方について、上記の調査結果も踏まえながら、論文化し、学会誌に投稿した。
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