<研究の目的> 治安に対する不安が上昇する日本社会において、日本の文化的・制度的文脈に相応しい市民生活の安全確保のあり方を考察するため、アメリカ、イギリス、日本のセキュリティ供給について、国際比較研究を行なう。その際、刑事学・犯罪学に偏ることなく、とくに研究代表者の専門分野である地域・都市社会学の視点から考察する。1年目はアメリカを、2年目はイギリスを中心的に研究を進める。 <研究の経過・成果> 2年間にわたる研究の1年目として、アメリカにおける1950年代以降の犯罪動向とそれに対応する刑事政策、一般市民の犯罪リスクの性質や犯罪恐怖に関する文献・資料を収集し、その整理の中間点として、論文「アメリカにおける犯罪のリスクと個人のセキュリティ」(平成16年8月)を発表した。また、現地での資料収集を踏まえ、学会で口頭発表を行った(「アメリカの大都市における個人のセキュリティ」平成16年9月)。年度の後半は、文献・資料の収集を継続するとともに、研究の焦点をニューヨーク市に当てて、1990年代に展開された新たなポリシングの動向(ゼロ・トレランス、秩序維持ポリシング等)を検討してきた。ニューヨーク市の取り組みは、刑事政策として世界的に注目・評価されているが、社会学の立場から考察する場合、それが孕む問題点は少なくない。それらの論点を整理して、平成17年度中に論文にまとめ公表することにしたい。
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