平成18年度は、平成16年度〜平成17年度に実施した研究の総括を行った。 本研究は、産業の情報産業化や地域情報化が進行している沖縄本島地域において、メディア環境の変容が地域固有性の高い市民意識や地域文化にどのようなインパクトを与えるのか、その過程と変容を捉えることを目的に研究を進めてきた。研究の結果、以下のような成果を得ることができた。 メディア環境と人びとの生活行動や地域意識との関連性を確認するために、調査回答者を、4つのタイプ-(1)インターネソト利用者かつ多チャンネル放送の視聴者(以下、多メディア利用者)、(2)インターネット利用者ではあるが多チャンネル放送は非視聴者(以下、インターネット利用者)、(3)多チャンネル放送の視聴者であるがインターネットは非利用者(以下、多チャンネル利用者)、(4)インターネットも多チャンネルも利用しない(以下、非利用者)-に分類した。 利用するメディアによる沖縄本島や文化に対する意識・考え方の顕著な違いはみられなかったが、多メディア利用者は地域の伝統・文化への意識が非常に高いという知見を得た。異なるメディア環境は人びとにメディア選択の違いをもたらし、それによって人びとの情報行動は一律なものではなくなる。なかでも多メディア利用者やインターネット利用者というインターネットを利用する人びとの間で、生活時間の変化、情報化への高い意識、地域意識への変化を確認することができた。他方、ケーブルテレビのコミュニティチャンネル(地域情報番組)が地域意識の向上・醸成や地域活動への参加促進へ貢献するという結果は確認されなかったが、多チャンネル放送を視聴することによる生活行動への変化は明らかとなった。 このように、生活面での情報化は確実に人びとの生活に変化を与え、利用するメディアによっては地域意識へも影響を与えていると考察できる。今後さらに、地域の情報通信産業化や地域情報化が進行し、メディアの利活用が多様化するにつれ、人びとの生活様式の変容をもたらし、市民意識や文化へも影響を与えることが推察される。
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