現代日本の環境運動はどのように形成され、変化してきたのか。また、今日の環境NGO・NPOやボランティア活動は、1960年代以降の安保闘争、学生運動、平和運動などの「大文字の社会運動」とどのような関係にあるのか。本研究では、特定のイデオロギーを掲げ、社会変革を訴える「大文字の社会運動」がそれぞれ個別の開発反対運動、公害環境運動、地域運動へと分立・交差するところに位置し、今日の環境NGO・NPOの先駆けでもある「水俣病センター相思社」(以下、「相思社」)に注目し、それが70年代初期から現在にいたるまでの30年間の活動経験を「支援運動」という観点から分析する。それにより、社会が環境NGO・NPOやボランティア活動を支える理念の発見と、そこにおける被支援者と支援者との望ましい関係形成のあり方を構想するのが、本研究の目的である。 平成16年度は、これまでの現地調査により得られた知見を基礎に、相思社の職員と相思社設立に関わった水俣病研究会の関係者に引き続きヒアリング調査を行った。また、現在、熊本大学図書館付属資料室に所蔵されている、整理済みの資料を対象に資料収集を行った。 平成16年度11月には、相思社設立30周年の記念行事が行われ、そこで、これまでの相思社の活動記録が刊行された。これらも資料として収集するとともに、この資料作成に関わった関係者に、追加のヒアリングも行った。ただ、平成16年10月15日に、水俣病関西訴訟の最高裁判決が下されたことにより、かつての申請運動が再び盛り上がる情勢の中で、従来の環境NGO・NPOの歴史的検証という本研究の課題を遂行する上で、大きな困難を伴ったことも事実である。次年度以降、こうした水俣病問題をめぐる情勢変化を踏まえて、どのように資料収集と追加のヒアリングを行うかを、再度検討し直すことが迫られている。
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