平成15年4月に、米国の某州立大学に通う白人1年生369名と日本の某国立大学に通う日本人2年生433名から収集したデータを分析した結果は以下の通りです。まず、16種類の逸脱行為(器物損壊、窃盗、カンニング、薬物使用等)に従事する頻度は白人学生の方が高く、日本人学生との差異も統計的に有意性が認められました。又、日米グループ共に、男子学生の方が女子学生よりも頻繁に逸脱行為に従事する傾向が立証されました。しかし、性別間でその差異に有意性は認められませんでした。 逸脱行為に走る背景については、SutherlandのDifferential Association Theoryの中で提唱されている以下3つの概念を使って検証しました:(1)逸脱行為に従事した友人数、(2)逸脱行為を是認する友人の態度、(3)逸脱行為を是認する自身の態度。重回帰分析の結果、過去1年間に逸脱行為に従事した友人数が多ければ多いほど、そして、その友人が逸脱行為に賛同する態度を強く持っていればいるほど、自身も逸脱行為に賛同する態度を習得する。そしてその結果、過去1年間に自身が逸脱行為を起こした頻度も高くなる、といった因果関係が日米両グループに認められました。 日本人学生の方が白人学生よりも逸脱行為を思いとどまる原因については、日本人学生の方が(1)逸脱行為に走った親しい友人数が少ない事、(2)親しい友人間で逸脱行為に反対する態度が強い事、そして、(3)自身が逸脱行為に反対する態度が強い事、以上3つが要因として強く働いている事が統計的に実証されました。 最後に、上記概念それぞれが自身の逸脱行為に及ぼす影響についても日米間で検証しました。分析の結果、唯一日米間で影響度の差異に有効性が認められた概念は、自身の逸脱行為に対する態度でした。個人主義の傾向が強い白人学生の方が、自身の信条が行動に及ぼす影響が強い事が実証されました。
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