米国白人1年生369名と日本人2年生433名から収集したデータを分析した結果は、以下の通りです。まず、16種類の逸脱行為(器物損壊、窃盗、カンニング、薬物使用等)に従事する頻度は、日米グループ共に、男子学生の方が女子学生よりも高いことが立証されました。更には、その頻度の性別間差異は、アメリカ人学生の方が日本人学生よりも大きいことが、統計的に示されました。 逸脱行為に走る背景については、サザーランドの分化的接触理論の中で強調されている、仲間の非行に着目しました。日米間における男子と女子のしつけ方、そして、昨今の日本人青少年の女性化を背景に、以下の仮説を立て、検証しました:(1)仲間の逸脱行為が自身の逸脱行為に及ぼす影響は、女性よりも男性においての方が大きい、(2)その影響度の性別間差異は、日本人学生よりもアメリカ人学生においての方が大きい。重回帰分析の結果、両仮説とも支持されました。仲間がルールを犯せば犯すほど、自身もルール違反行為に走るという傾向は、女性よりも男性の方が強いことが分かりました。又、その性別間差異は、アメリカ人の間では統計的に有意性が認められた一方で、日本人の間では認められませんでした。 もう1つ。セルフ・コントロール理論について検証しました。グラスミックらが開発した尺度は、アメリカ人学生の間では1因子構成、一方、日本人学生の間では2因子構成(刹那・自己中心的、快楽的)が示唆されました。そして、これら因子は全て、逸脱行為を促進する要因として有意に作用していることが分かりました。中でも、日本人学生の間で認められた2因子については、快楽的自己統制力が、刹那・自己中心的自己統制力よりも強く働いていると示されました。なぜ日本人学生の間では2因子構成が示唆されたのかについては、今日危惧されている母子関係の2極化(密着型、放任型)を中心に、今後、論述していくつもりです。
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