第一に、昨年度に引き続き、地域において知的障害のある人たちをとりまくインフォーマルな関係形成を試みるコミュニティハウスの実践に関するデータを収集した。 第二に、このデータベースに基づいて「障害のある人たちが地域で当たり前に生活するためのたまり場づくりセミナー」を開催した。このセミナーは、コミュニティハウスの概念やたまり場の必要性について練り上げ、障害のある人たちの生涯にわたる地域生活の基盤形成の土台となる情報の集積、ネットワークの形成を目的とした。2006年2月12日に大学のサテライト施設「のびやかスペースあーち」を活用して実施し、関東、中京地区も含めて50余名の参加者を得た。話題提供した実践は、わっはの家(神戸市東灘区)、くじらハウス(東京都国立市)、解放の家(大阪府四條畷市)であった。セミナーを開催して分かったことは、知的障害のある人たちの地域生活のために、いわゆるたまり場が必要であることの認識が広まっていること、けれどもたまり場という一部公共性に反する場の形成には実践的な困難が大きく、インフォーマルな関係形成が必要と感じている人たちであっても、そのように感じることに対して自信をもつことができない状況があることなどであった。 第三に、実際に地域においてインフォーマルな関係形成に関する実践的な研究を行った。神戸市灘区に神戸大学大学院総合人間科学研究科のサテライト施設「のびやかスペースあーち」を開設し、住民の関係形成を図る実践を試行錯誤した。まだ研究データとしては抽出していないが、データ化のための基盤を形成した。今後、相互承認の場をつくる際の課題などを整理し、実践の手法などについてまとめていくことになる。
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