本研究では児童自立支援施設や少年院を退所した非行経験のある児童(以下、非行児童)が、施設内での支援を終え、社会において自立していく第一歩となる就労先の確保は常に困難であることを問題視し、非行少年の職業体験ならびに就労をスムーズに行うために必要となる条件を明確にすることを目的としている。初年度にあたる平成16年度は文部科学省実施の「どもの居場所づくり新プラン」の1事業である「問題を抱える青少年のための継続的活動の場づくり事業」を担当するコーディネーター対象に調査を予定したが、実施先が全国で5府県(福島県、石川県、京都府、広島県、沖縄県)と少なかったため、計画を変更して青森県内の保護司を対象に非行経験を有する子どもの就労支援の現状と問題点に関して全数調査をおこなった。(回収率は約79%)その結果、非行歴の有無が雇用に影響すると考えている保護司が「そう思う」、「どちらかと言えば、そう思う」あわせて全体の85.9%を占め、その主な理由として、「会社側に非行歴があることに対して偏見があるから」(26.3%)、「少年が職場の人間関係になじめないと思われているから」(15.5%)、「仕事をすぐに辞めてしまうと考えられているから」などが上げられた。 また、非行経験を有する少年の雇用に際して企業が重視していると考えている項目を聞いたところ、かなり重視している項目として「明確な職業観や働く意欲があること」、「仕事に対する責任感があること」、「積極的に仕事を行う姿勢」などが上げられており、「礼儀や挨拶が身に付いていること」、「役立っ特技を有していること」、「義務教育以上の学歴」は比較的重視している項目として回答が高かった。これにより、保護司は企業が雇用の際に重視しているものとして「少年の仕事に対する姿勢」であると考えている傾向が窺えた。
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