本研究の目的は、(1)日本の要介護高齢者を対象にして、要介護状態になることの困難、生活や人生を再構築する過程、再構築を左右する対処のありかたを経時的に把握し、定義しなおされたウェルビーイングの構造と特徴を明らかにする。(2)それらを通して、要介護高齢者の生活・人生とそれに関わるニーズを把握するための方法を提示するとともに、保健・医療・福祉サービスのあり方への提言をする、である。 17年度は、昨年インタビューを行った5名の在宅要介護高齢者の追跡調査を行った。約1年後の生活状況の変化、対処、ウェルビーイング(幸せや支え)などについてインタビューを行った。 その結果、1名を除いて心身機能に大きな変化はなく、安定した生活を送れていた。身体機能が低下していた1名についても、日常の不便はあるが、昨年度のインタビューで語られた「目標の再設定」「残存能力と資源を豊かにする」「資源を用いて喪失を補う」「よいことをさがす」「深く考えない」の対処を引き続き用いていることが確認された。また、「対人関係」「受動的なアクティビティ」などのウェルビーイング維持に影響する要因も明らかになった。 要介護状態になることにより新たな困難を抱えるが、それに対する対処があり、期待水準を下げるなどしてウェルビーイングが得られていることが確認されてきた。今後は、対象数を増やして追跡調査を行い、ウェルビーイングの構築過程を捉えていく予定である。
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